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熟議はなぜ必要なのでしょうか?

 「熟議2018 in兵庫大学」にご参加いただき、ありがとうございます。

 最初に「熟議」について説明します。熟議は、「熟慮」と「議論」を併せた言葉です。ですが、よく考え議論をする、だけではない意味が「熟議」にはあります。それは、住民や国民の投票で選んだ代表者が議論し決する間接民主主義を補完する役割がある、ということです。

 社会の課題を解決するために、またよりよい社会を築くために必要な、社会的サービスがどのように提供されているのか、という観点から考えてみましょう。社会的サービスには、例えば福祉サービスや保育、教育、道路の復興などが含まれます。

 国や地方自治体は社会的サービスの多くを供給してきました。どのサービスを、どれくらい供給するのか、は法や制度で決められ、国会では私たちの代表者が、市や県でも議員同士が、また議員と市長・知事がこれらを巡る議論を交わしています。つまり、代表者の議論で、社会的サービスの供給が決定される間接民主主義による政治は、国民や住民の意思を反映する、効率的で優れた仕組みです。
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 ただ、社会の課題が複雑になると、その解決の方法も多様になります。すると国や自治体だけが社会的サービスを供給するのではなく、多くの主体、つまりNPOやボランティアの方々も、供給の担い手になるかもしれません。例えば、学校は市や町が整備をします。自治体による社会的サービスの供給です。でも児童が抱える貧困や家庭内不和などの問題を解決してくれるのは、ボランティアによる「子ども食堂 」であったりします。
注)子ども食堂は、子どもや保護者などに、無料や安価で食事を提供することにより、貧困等を要因として十分な食事ができない、あるいは孤食になっています子どもの課題を解決する活動のこと。

 こうなると、投票により社会的サービスの量や供給を決定する間接民主主義だけでなく、関わりを持つ人々が直接議論をして決する方法も必要になります。市や町で考えると、投票をすることができるのは、その自治体に住まう住民です。別の自治体からのボランティアが、子ども食堂を運営している関係者であっても、どのような社会的サービスを供給するか、に投票で関わることはできないのです。

 熟議の場合、住民だけではなく、社会的サービスを供給する企業やNPO、ボランティア団体、社会の課題を感じる人々が直接参画し、立場の異なる人々が同じ目的で議論を交わすのです。
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 「熟議2018 in 兵庫大学」でのテーマ、「しごと創り」も国や自治体だけで解決することが難しい社会の課題です。そもそも、私たちが享受する消費生活は、サービスを提供したり商品を製作するという無数の「しごと」で支えられており、その多くを民間の企業が提供しています。「しごと」を作るための仕組みや考え方も、国や自治体以外による社会的サービスが必要になるかもしれません。

 様々な立場の方が、課題に対し熟慮するとともに、議論を行う「熟議」が始まります。


熟議は話し合いとは違うのですか?

 社会の課題について、関係する人々が、考え直接議論を交わす重要性はご理解頂いただけましたか?

 これまでも、学校、あるいは職場や地域で、課題を解決するために話し合いをしてきた経験がおありだと思います。これは民主的な方法であり、正しいやり方と教わってきました。こうした、話し合いと「熟議」とはどこが異なるのでしょうか。

 「熟議」は熟慮し議論するもので、熟慮が議論の前にあります。話し合いで出てくる新たなアイデアは貴重ですが、一方で、事前の情報が不足し、参加者が互いに認識を共有しないまま話し合いが終ったり、結論が必ずしも現実を反映していなかったり、ということもしばしばあります。

 熟慮をすることで、課題を理解し、自分の考えを整理しておけば、実のある議論ができると思います。「熟議」は、そうした熟慮の段階を議論の前に持つことで、議論だけよりも、課題の解決や方針を立てることに近づくことができると考えられています。



「熟議2018 in兵庫大学」はどのように進められますか?

 兵庫大学では、この熟議を「熟慮の段階」、「議論の段階」、「共有の段階」、「振返りの段階」、そして「実践の段階」の5つに体系化しています。これが兵庫大学熟議手法です。この手法に沿って、「熟 議2018 in兵庫大学」の進め方を説明します。こちらをクリックして下さい。
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