兵庫大学 兵庫大学短期大学部

熟議

熟議

熟議とは何か

熟議(Deliberation)とは、複数の市民の関わる公共圏での課題について、市民が考えを持ち寄り、議論をする場、またはその一連のプロセスのことです。現在、世界ではさまざまな市民の参加による熟議、またはそれに類する集会が展開されています。ドイツでの都市計画の決定に際して時に行われるPlanungszellen(計画細胞会議)、アメリカで立ち上がり、イギリスでも導入されているCitizens' Jury(市民陪審制度)など、これまでも数多くの機会に紹介され、知られる取り組み事例もあります。

そもそも「熟議」という語は、熟議の国会など、理性的な熟慮と議論を重ねて結論を得る場合にも用いられるものですが、成熟した民主主義国家において、主として国民の代表が議論を経て決定する制度は、政治的思惑、官僚機構の抵抗、ロビーイングなどの要素が加わることにより、沈黙する多数の国民の声や考えを政策や方針に反映させることを難しくし、さらに沖縄県の普天間基地移転問題を例に出すまでもなく、民主主義の名により決せられる政府の意思が、時に公共圏における生活や社会との激しい衝突をもたらすこともあるのです。こうした衝突を回避し、市民の、そして市民と政府の間でのコミュニケーションを図る手段が熟議であり、成熟した民主主義におけるその補強を目指す様々な試みの一つとして、熟議が必要とされているのです。

兵庫大学熟議方式とは何か

兵庫大学熟議方式は、2010年、民主党が政権にあった時、文部科学副大臣であった鈴木寛氏の提唱として始まる、「熟議カケアイ」にその源があります。熟議カケアイは、教師や学生のみならず、教育に関係するステークホルダーが参加し議論をする場とされました。まずはホームページに開設され、その後、大学など教育の場での実践が行われ、兵庫大学は2012年度に「熟議2012 in 兵庫大学」を開催しました。その際、開発した熟議の手法が「兵庫大学熟議手法」です。この経緯もあり、まず熟議の定義を、鈴木寛氏による「熟議とは熟慮して議論をすること」に求め、同じく、氏の、熟議は優劣を競うディベートと異なり、話し合いを重ねることで成長をする、という点に焦点を当てて設計をしました。

兵庫大学熟議手法は、大きくは5つの段階に分かれます。最初が「熟慮の段階」で、自ら情報を集めたり、他者より供与された各種の資料などを踏まえ学習し、問題点を見出し、また解決策を自分なりに考えるなど、課題を認識する段階です。次が「議論の段階」であり、参加者それぞれの認識を会議の場に持ちより、これを開示し、議論を進めます。相手を説得するのではなく、話し合い、議論を重ねることで発展的な結論を導く段階になります。そして「共有の段階」です。複数の話し合いで紡ぎ出された結論を他の参加者と共有します。「振り返り」の段階は、共有した結論を踏まえ、自分自身がどのように変化をしたのかを知り、結論の実現に向けて仲間づくりを行う段階になります。成長を確かめるためにも振り返りの段階が必要になります。最後が「活動の段階」となります。仲間とともに、その成果をそれぞれの立場で、それぞれの考え方を持ち、共に地域で活動をすることが、熟議の最大の成果となります。

また兵庫大学熟議手法では、特徴として参加者、特に学生の成長を計測し、これを学びのプロセスとしていること、また討議型世論調査の手法を応用し、熟議参加前後における考え方の変化の計測を行い、それをもって政策提言につなげることを可能にしていることが挙げられます。

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